Artec Leoでキャプチャされた驚くほどリアルな人体の3Dモデルを用いた授業
課題:生徒を更に惹きつけ、医療関係機関での業務に携わる準備をさせることのできるインタラクティブな授業のために、実在の人体部分から3Dモデルを作成すること。
ソリューション:Artec Leo、Artec Studio、及びApple Vision Pro
結果:三百六十度からキャプチャされた手足、臓器、並びに産婦人科で必要となる重要な特徴をすべて備えた骨盤領域も含めた、身体組織全体の高度に詳細な3Dモデル。
なぜ、Artec 3Dなのか:高速でワイヤレス、そして直観的に利用できるArtec Leoは本物に忠実なデジタル学習素材を迅速に作成しようとしている初心者の方にはぴったりである。Artec Studioは実際の複製品のキャプチャ済みデータを3D印刷、もしくは仮想現実ヘッドセットでの視覚化のためにSTL、OBJファイルに変換する。

Artec LeoとArtec Studio上の脳の解剖学的3Dモデル。画像はNUSのご厚意で掲載
3Dテクノロジーは、医療分野では必要不可欠のものとなっている。手術前の患者への教育であっても、その具体的方法を生徒へ教える場合であっても、解剖学的モデルは(3D印刷されたもの、デジタルの双方とも)事前の視覚化に最適なソリューションとなる。
人体のデジタル化に潜む主な課題の一つは、正確度である。我々の体内はキャプチャの非常に難しい複雑な系統と細かいディテールで一杯である。例えば、血管はデジタル化の際でのモーションアーチファクトの影響を受けやすい、幅の小さな入り組んだネットワークで形成されている。
その上で、テクノロジー統合の問題もある。理論上では、モデル作成は患者や生徒の教育に効果的なインタラクティブな方法のようだが、キャプチャされたモデルから利用可能な3D印刷、仮想現実、拡張現実用データを生成することは手間がかかる上、ファイルサイズも問題となる。3Dスキャニングは複雑なオブジェクトのキャプチャには素晴らしいツールであるが、詳細なモデルの容量は仮想現実で利用するには大きすぎるのである。
以上の問題に対処するため、シンガポール国立大学(National University of Singapore、NUS)はArtec Leoを用いて3D教育素材の作成を開始した。このワイヤレスでターゲット不要のスキャナは人体の全身を高解像度で、数秒のうちに完全非接触の形でキャプチャするため、同機器は保存状態の良い、繊細で「湿った」標本からリアルな3Dモデルを作成するには申し分ない。
超高速で柔軟な対応の可能な人体のキャプチャ
Artec社アンバサダーのShonan 3D社からLeoを紹介された程なく、NUS大学職員のChandrika Muthukrishnan博士とArthur Lau Chin Haeng博士は賢い選択をしたことに自ら気付いた。初期の段階で製作した頭蓋骨のモデルのスキャンデータは、頸筋から脳細胞まで、すべてのものを網羅していたのである。

骨の標本をArtec LeoでキャプチャするNUS大学職員。画像は、NUSのご厚意で掲載
研究班が大学間の共同研究の一環として以前利用していたArtec Space Spiderと比較すると、Leoは遥かに機動性が高いことを自ら証明した。このケーブル不要の機器はディスプレイ、バッテリー、及びプロセッサを内蔵しているため、操作中にはノートパソコンは不要である。Leoではリアルタイムでのフィードバックも得ることができるため、簡単な操作は保証されている上、どんなディテールも漏らさない。
もちろん、Spiderは更なる高解像度を誇り今回でも十分に利用できるものの、このケースではLeoの多用途性が必要不可欠となる。標本をあらゆる角度からキャプチャするためには、コードが邪魔になるような工程ではNUSの講師はSpiderをフックで吊るすことが多いが、Leoは正確さも犠牲にしないため、既に極めて優れた成果が挙がっている。
「骨盤の3Dモデルをキャプチャしたが、当校の医長はそのリアルさ、及び生徒への詳細な説明の際の利用しやすさにとても感心した様子だった」と、Muthukrishnan博士は話す。「太ももと外性器の前部である骨盤部はすべて目視できる。骨盤領域、膀胱、直腸もすべて、産婦人科には重要である」
Artec Studioと取り組む
比較的初心者に近いNUS担当班にとって、Artec Studioの使用方法の習得には時間が少し長めにかかったが、Shonan 3D社から少し力を借りることにより、完成品の仕上げにツールセットを活用できるようになった。メッシュ編集の必須機能により、完璧で美しくテクスチャの施されたモデルの作成のためのノイズ低減、外れ値の除去、穴埋めができる。内蔵の計測ツールであれば、比較分析も可能となる。

解剖学的モデルで人体の研究をするNUS大学生。画像は、NUSのご厚意で掲載
VRでの用途においては重要なことだが、Artec Studioであればスキャンデシメーションも実現する。このことで、キャプチャされたモデル全体のファイルサイズの低減が重要なディテールも失うことなく可能となる。このソフトウェアではクリック一つでOBJやSTLファイルへの変換もでき、視覚化、及び3D印刷のためのエクスポートが効率化される。Shonan 3D社の常務取締役 Patrick Sngによると、幅広い用途の可能性があるとのことである。
「3Dレンダリングの際、生徒は自身のノートパソコンですぐにチェックできる。この教育法には、驚くべき可能性がある」と、Patrickは説明する。「画像、色彩、及びテクスチャの表示によってすべてが非常に分かりやすく、実在の標本よりも生徒の理解が深まる」
以上のような学習素材が利用可能となり、学生は3D空間で本物の解剖学的データを自由に操り、ノートパソコンや仮想現実で関心のある部分の研究のために拡大して調べることができる。NUSでは、この手法は医療に限られたものではなく、調剤学、生命科学、歯科学のすべての分野でも利用可能である。
微調整と3Dプリンティングへの可能性
NUS大学職員は、3Dスキャニング技術の向上に引き続き努めている。例えば、液体の中に保存された『湿った』人体部分は吊るすことができないことがあるが、このような場合はArtec Studioの高性能の位置合わせツールが役立つ。また、今はデジタル化を待っている課題の多い標本が列をなして待っている状態である。

Artec Leoによる3Dスキャンデータを利用して再現された骨盤のモデル。画像は、NUSのご厚意で掲載
Muthukrishnan博士は将来、この3Dモデル作成の取り組みを拡大していく予定で、頭部と頸部の詳細な調査、並びにその他の複雑な人体構造にも手を広げていき、医学生が人体部分同士の間の複雑な関係、そして発達における重要性の理解を深める手助けを行う。そのためには、評価、教育、及び手に取れる物体としての再現のために更なるデジタル複製の製作が必要となる。Dr. Lau Chin Haeng博士は、その先で仮想現実が講師にとって重要なツールとなり得る、と考えている。
「大学には仮想現実用ヘッドセット一式が揃えてあり、個人的にはApple Vision Proも所有している」と、Lau Chin Haeng博士は話す。「実際に、携帯電話に繋ぐことのできるソフトウェアもある。3Dスキャンされたオブジェクトを入力できるので、以上のようなモデルは3D印刷のみならず、仮想現実教育にも利用できる。ノートパソコン上で表示することもでき、講堂などで役立つ」
明らかに、医療研究は飛躍的発展を遂げている。先進技術は日常的な教育体制の一部になりつつある。学習体験は確実に更なる理解と記憶を促す形でより深まり、インタラクティブなものとなる。多くの分野でのように、未来はデジタルであるが、シンガポール国立大学では、その未来は今なのである。
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